処分は内部通報に対する報復と考えなければ理解不能ー黒田末壽氏(滋賀県立大学名誉教授)

 

以下は、2016年2月25日付けで富山地裁に提出された黒田末壽氏(滋賀県立大学名誉教授)の陳述書の抜粋です。
同氏の許諾を得て、掲載します。

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実験によって仮説の是非を明らかにするクリアーでシンプルな結果が求められる自然科学系の領域と、多様で流動的な社会現象をその内部に入って研究する人文系のフィールド学問の領域では、データの性格と論文化するプロセスがそもそも異なります。

そのことから、 これらの分野間で「未刊行」業績の取り扱い慣行が異なっているわけです。理系の実験系に見られる原則を、無理矢理に、 すべての学問分野の一般通則だとして「未刊行」業績の記載を「虚偽」と決めつけ、 それをもって竹内氏を懲戒解雇にした富山大学の論理に正当性があるとは思えません。


富山大学では入試の合格者をあやまって不合格にした結果を組織的に隠蔽し続けた事件がありました。竹内氏は、隠蔽が発覚した後も、 富山大学が発表しなかった重大な事実があることに気づいて、富山大学や文部科学省に内部通報をおこなった人物です。

今回の竹内氏の懲戒解雇は、研究者や大学一般の常識からあまりにも外れた前代未聞の処分であります。私には、これらの通報に対する報復という側面を考えなければ、竹内氏への処分は理解できないほど過重なものであるということを、最後に言い添えておきます。

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2017年01月16日|コメント:弁護士・研究者のコメント